Artist 野中梨恵 瓦礫の再生という概念を立体的に表現することを通じて、作家は人間の視覚と記憶の曖昧さ、そして主観性について深く探求しています。作家の作品は、一見無秩序に見える瓦礫の中から、新たな秩序や意味を見出そうとする試みであり、同時に人間の知覚と認識の複雑さを象徴しているのです。 さらに、作家の作品には、他者によって破壊されても、美しく再生していけるという強いメッセージが込められています。これは、人生における困難や挫折に直面した際の回復力や復元力の重要性を示唆しているといえるでしょう。作家は、瓦礫の再生という表現を通じて、人間の持つ内なる強さと美しさを表現しようとしているのです。 エレン・アルトフェスト(ELLEN ALTFEST 1970~)が述べているように、ARTには「崇高な何かへ繋がる」力があります。作家は、この「崇高」という概念を具現化するために、脳内に蓄積された視覚的情報を統合し、時にはフィルターをかけ、さらに分解するプロセスを経て、抽象化または具象化という形で表現しています。 人間の色彩認識は非常に曖昧であり、個人の主観に大きく依存しています。目が受け取った電磁波の信号を脳が解釈することで色が認識されますが、目には盲点と呼ばれる光を感じられない部分があり、脳がその情報を補完しているのです。つまり、世界の見え方は人それぞれ異なっているといえます。 作家の作品は、人間の視覚と記憶の不正確さ、そして作家自身の主観が織り交ぜられたものです。鑑賞者がさらに自身の主観を加えて作品を解釈することで、新たな情報が生まれ、やがてそれが「崇高な何か」へと繋がっていくのではないでしょうか。 [Exhibition] 2024.4 福岡『躍動する現代作家展』 2024.8 東京 『Independent Tokyo』 [受賞] 2024.4 躍動する現代作家賞